加賀左官伝統技術保存会設立趣意書

1, 趣 旨
金沢には、前田利家の金沢城入場以来、尾張、近江、京都の町人や文化人が移り住み、江戸時代に入り、前田利常の代にはその文化振興政策により、能を始めとする芸能や茶道、華道。また、それらの文化を支える加賀友禅を始めとする各種工芸が花開き、独自の加賀文化を形成するに至った。
 それらの文化は、芸能・工芸から加賀料理という食文化へと発展し、衣・食のあと住としての建築文化の醸成にも及んだ。例えば金沢独自の群青色の壁を塗った部屋などがその代表的なものと言える。
 それらの中で唯一、今日その伝承が危ぶまれているものが建築技術、特に左官技術である。現代の乾式工法、工期至上主義の中では何工程もの仕事を経て完成する壁塗りの文化は、「時間がかかる」、「高額である」、という事で敬遠され、ほとんど一般の人には解らない塗り壁風クロスの出現により、その文化の継承は正に風前の灯火となっている。
 しかし、平成13年の金沢城菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓の復元工事により、加賀の左官職人はその消えかけた灯火に気づき、伝統工法を知る古い職人と殆ど古式工法とは縁の無かった若い職人が一緒になり、木舞かきから粗壁塗り、そして最後の漆喰の仕上げを共に技術を研鑽しながら作り上げ、その仕事の中から改めて左官技術の伝承の必要性を感じたのである。
 そこでここに、伝統的左官技術の保存と、後継者育成に務め、加賀職人及び地域の文化遺産の継承発展に寄与することを目的として加賀左官伝統技術保存会を結成するものである。

■2. 申請に至るまでの経過
伝統的左官技術の保存と、後継者育成に務め、加賀職人及び地域の文化遺産の継承発展に寄与することを目的として、各種左官事業に関わる有志が平成16年6月に一堂が会し、設立に関する準備会をもった。当該事業は非営利性が高く、且つ公益的理念と、市民へ開示された運営が必要とされることが話し合われた。また、法人格を取得することにより、左官関連企業との連携促進と、行政に対する当該事業の理解促進になることから、その後、民間のNPO支援組織へNPO法人としての団体結成の可能性を打診した。その結果、上記目的を達成するために、特定非営利活動法人 加賀左官伝統技術保存会として申請するに至った。